「即効性がある」とブームが続く炭水化物抜きダイエット。だが今、その安全性に警鐘が鳴らされ始めた。その時、体の中で何が起こるのか。手遅れになる前に知っておきたい、超人気ダイエットの真実。



体重と一緒に筋力も落ちる


「食べることが大好きだった当時の自分は、もちろんのことでご飯(白米)は大量に食べていた。体重も70㎏、80㎏、90kg以上とガンガン増えた。階段の上り下りなど、ちょっと動くだけできついし、息もすぐに切れる。このままではまずいと思い、当時取り組んでいたダイエット法に炭水化物抜きダイエットを始めました」



話題となった「炭水化物抜きダイエット」。



現在の書店には関連書籍がズラリと並び、メディアにも頻繁に取り上げられている。やり方はシンプルで、ご飯やパン、芋、果物などの炭水化物に含まれる糖質の摂取量を一日130g以下~に抑えるというもの。炭水化物を極力減らせば、おかずはなんでも、好きなだけ食べていい。



もともとは糖尿病や重度の肥満患者に対する食事療法として考案されたものだが、いまや「手軽に痩せられるダイエット法」として、老若男女を問わず人気を集めている。人気の秘密は、糖質さえ制限していれば、あとは肉でもアルコールでも摂取OKという取り組みやすさと、目に見えて現れる効果にある。



炭水化物の糖分は体内で中性脂肪に変わり、人間のエネルギー源となる。炭水化物を絶つことで中性脂肪を減らして痩せる、いたって単純なメカニズムのダイエット法だ。



私もご飯や麺類などの主食をいっさい抜き、肉をメインとするおかずで腹を満たす食事を続けた。その結果、ほんの1週間半で4kgのダイエットに成功したのだが、同時に大問題を抱え込んだ。







「初めは調子が良かったんです。一週間半で体重が4kg減りました。効果覿面だったことが嬉しくて、それからますます真剣に取り組み、みっちり糖質制限をした結果、体重を70kg位から50kg台まで落とすことができました。



当然、体重が落ちれば身のこなしも軽くなるだろうと思っていました。ところが、次第に筋力が落ち、寝起きで体を起こすや階段の上り下りが以前にまして苦しく、重い感じになってしまったんです。そんな夏のある日、家の手伝いで一日中庭の手入れをしていたのですが、気温は30°以上あると言うのに全く汗をかかないし、むしろ寒気を感じるのです。親に相談して病院で検査を受けたところ、『低血糖症からくる代謝不順や身体機能の低下』と診断されました」



減量効果は正直どんなダイエット法より絶大で恐ろしいくらいでした。



糖質制限は、なぜ危険なのか。糖尿病の世界的権威のあるとある病院院長のが解説していました。



「人間には一日170gの糖が必要とされています。そのうちの120~130gは脳で消費され、30gは全身に酸素などを運ぶ赤血球のエネルギー源として消費されます。糖質は、生命を維持するために欠かせない栄養素なのです。



糖質を制限してしまうと、代わりにタンパク質を構成しているアミノ酸を、肝臓が糖に作り変えるというシステムが働き始めます。タンパク質を糖に変えられるなら、肉を食べれば問題ないのではないかと思う方もいるでしょう。しかし、人体の維持に必要なエネルギーをタンパク質や脂質でまかなおうと思ったら、毎日大量の肉を食べなければなりません。数kgもの肉を毎日食べ続けることは現実的に不可能です。糖エネルギーが不足すると、それを補うために、体は自分の筋肉を分解してアミノ酸に変えていきます。結果、筋肉量がどんどん減っていってしまうのです」



このように危険を伴うが絶大な効果をもたらしてくれるダイエット法はたくさんあります。